イケてるダッシュボードを作りたい!アナリストが自分自身の仕事を分析してみた

こんにちは!MonotaROで3年ほどアナリストをしている杉田です。1年前にマーケティング部門マーケティングサイエンスグループに異動し、現在はマーケティング施策の効果検証手法や売上予測手法の改善に取り組んでいます。データサイエンス領域でのスキルアップを目指しており、アナリストとデータサイエンティストの間という(MonotaROの中では)少数派な道を歩もうとしている最中です。キャリア面での葛藤話もまたの機会にお話しできたらと思っていますが、若手メンバーのオンボーディングについて部署の皆さんと執筆をした記事がありますので興味があれば覗いてみてください。 note.com

今回は、アナリスト業務をする中で複数回ぶつかってきた「せっかくダッシュボードを作ったのに活用されない」という悩みについてじっくり考えてみたことをお話していこうと思います。

「せっかくダッシュボードを作ったのに活用されない」というアナリストあるある

アナリストと一口に言っても役割は様々かと思いますが、私は現部署に異動するまではWebサイトの改善活動を行う部署にいた期間が長く、サイト上での注文実績やユーザー行動履歴を分析することが中心でした。また、データの取り扱いに慣れていない他部署からの分析相談に応えるというケースも多く、商品情報や問合せ情報などの分析課題にも関わりました。

そんなアナリスト業務に携わる中で「せっかくダッシュボードを作ったのに活用されない」という場面は多々あります。あるデータのダッシュボード化の要望を受けて着手するのですが、納品後は「それを使ってどんな意思決定がなされたのか?」「ちゃんと活用されたのか?」等の動向を追えなくなってしまうのです。しばらく経った後に覗いてみると、誰にも閲覧されていない残念な状態になってしまっていることもあります。そんな結末を迎えるとアナリスト個人としても自信を失いますが、それなりの時間をかけて作ったものが使われないとなるとコストとしても無駄だったということになってしまいます。ダブルパンチです。👊👊

このような話は他社事例でもよく聞くし社内の同職種のメンバーにも共感してもらえるため、勝手に「アナリストあるある」なのかもしれないと考えています。一方で、活用するに値しないものを作ってしまうこちら側の問題は大きいと考えており、良い方法を見つけるべく色々と試しながらもがいているという状態です。

イケてるダッシュボードを作ることができた話

そんな悩みがある一方で、ちゃんと継続的に活用されるダッシュボードを作ることができた経験もあります。

どんなダッシュボードか

それは今から1年ほど前(2023年1月)に作った「売上成長要因分析」というダッシュボードで、売上の前年同月からの成長率を下記図のように要素分解し、ツリー構造で可視化したものです。

依頼元は、当時のマーケティング部門長でした。B2B向けサイトの売上成長率が、それまでよりも低い水準になった時期があり、好調だった時期を含めて要因を理解し次の対策を練りたいというリクエストでした。チームの中で経営課題分析サポートをする役割を担っていた私が作業者としてアサインされ、依頼者、作業者の杉田、相談役として当時の上長に入っていただくという3名体制で分析を進めました。

これまでと何が違ったか

先ほど話したように、特にダッシュボード作成に関しては苦い思いをすることが多かったので「またダッシュボード作成か...」という気持ちでスタートしました。しかし、このダッシュボードは部門のOKR策定や経営層の数値確認等の重要な場面で定期的に活用されるものとなりました。社内の閲覧数ランキングでも「部門長・役員が閲覧しているダッシュボード」の1位を1年間キープしています。周囲からも「毎月みてます!」や「真似をして自組織のKPIダッシュボードを作ってみました!」など...嬉しい言葉をたくさんいただきました。さらに社内での四半期毎の特別表彰にも選出され、心だけでなく懐も温まr...。このように様々な形で活用されている実感を得ることができ、ダッシュボード作成に関して前向きな気持ちになれるきっかけとなりました!

なぜ上手くいったのか? 自分自身の仕事を分析してみた

正直なところ、作業に着手する前から「過去の経験から改善点を考えて言語化できていた」というかっこいい状況ではありません。自分でも案外上手くいったので驚きました。また、依頼者はデータ分析の経験に長けた方で、分析イメージがかなり具体化されている段階から開始できたというのも大きな要因と考えています。しかし「偶然だけど嬉しい!運がよかった!」で終わらせてしまっては本当に偶然で終わってしまいます。なぜ上手くいったのかを掘り下げてみることで再現が目指せるのではないかと思い、じっくり考えてみることにしました。

無意識に起こしていた行動をあえて振り返って考えてみると、これまでの経験と同じ轍を踏まないように気を付けていた点があることに気が付くことができました。いい感じに言語化ができた学び3点を紹介したいと思います。

学び① 利用場面に即したものを作る

「リクエストされるがままに全ての指標を追加した結果、情報過多で見どころが分からないダッシュボードとなる」という失敗パターンは多いです。その根本的な原因は「いつ、何のために、どう使うのか?」という利用場面を依頼者側も作成者側も明確に説明できない状態であることだと考えています。特に、要望を伺う際に「一応この指標も...」という言葉が出た場合は黄色信号です。意図が曖昧であればダッシュボード化するべき時ではないと判断するのが良いです。

私が意識しているのは、いきなりダッシュボード化に着手せず試し集計から始め、議論を繰り返しながら利用場面を明確にしていくということです。利用場面が明確になっていない状況でダッシュボード作成にとりかかると、手戻りは100%発生します。あまり時間をかけずに試し集計やイメージ図を用意し、それをたたき台にする形で議論をしていくほうが具体的な利用場面を早くイメージできます。その後は利用場面で必要となるデータを要件として作業を進めていくだけです。

実際の議論の一場面をご紹介します。

頼まれた内容をいきなりダッシュボード化せず、試し集計を眺めながらその結果から何が判断できるのか?できないのか?を議論し、ダッシュボード化の要件を絞り込んでいくことができました。

といっても、そういった議論の進行はなかなか難しいです。今回のように分析イメージがかなり具体化されている段階での依頼であれば進めやすいほうだと思います。逆に、課題感はあるが分析イメージは全く沸いていないという状態である場合は議論の難易度が上がります。また、アナリスト側が依頼者側の業務内容を理解できずに難航することもあります。状況に合わせてヒアリングや議論を丁寧に進めていく必要があり、ケースバイケースです。ケースバイケースと言ってしまえばそこまでなのですが、汎用性の高そうな3つのコツを考えてみました。

・単なる作業者にならずに当事者として一緒に考える姿勢をもつ

・相手の温度感が冷めないうちに議論を進める

・相手に合わせてスタンスを調整する

単なる作業者にならずに当事者として一緒に考える姿勢をもつ

どんなデータが見たいのかを当事者として一緒に考えることはとても重要です。「いつ、何のために、どう使うのか?」を自分の言葉で説明できる状態を意識すると、自然と疑問やアイデアが浮かびやすくなり積極的に議論に参加できるようになります。少なくともリクエストされるがままに全ての指標を追加するという単なる作業者状態は回避できそうです。

相手の温度感が冷めないうちに議論を進める

また、活発かつスムーズに議論をするためには相手の温度感が冷めないうちにこまめにやりとりをするのがよいです。そうすることで、依頼者側も積極的に協力してくれるのでコミュニケーションコストが格段に下がります。完璧に作り上げてから共有したほうが良いんじゃないか...と考えてボールを長く持ちすぎてしまうことが何度もありましたが、悉く失敗に終わったので絶対にやめたほうが良いです。

相手に合わせてスタンスを調整する

そして、相手に合わせてスタンス(立場)を調整するという意識を持つこともけっこう大事です。アナリストはかなり柔軟性が求められる職種だと考えています。多方面から依頼や相談が来るので多くの人と関わることになりますが、人によってアナリストに期待する役割が微妙に違うと感じます。依頼者側が期待する役割とアナリスト側のスタンスがすれ違うと「ちょっと出しゃばりすぎたかな?」「こちらで決めていいのかな?」などと互いの顔色を探り合いながら進めることになり大変やりにくいです。その点を曖昧にしたことでなかなか前に進まないということは何度もありました。慣れてくると依頼時の様子でどのあたりの役割を求められているのかを察して上手く立ち回ることができるようになっていきますが、言語化は難しいです。探り合いをするくらいなら「どんな役割で進めていきましょうか?」と先に相談してしまうのも良い手だと思っています。

これまでの経験を踏まえて自分なりに「依頼者がアナリストに期待する役割」のパターンを図示してみました。

ちなみに、今回のダッシュボード作成は右下の「数値を見ながら一緒に考えたい」に近かったと考えています。

学び② ユースケースを広げすぎない

もうひとつ失敗パターンで多いのが「皆に使いやすくしようとした結果、情報過多で皆が使いづらくなった」というケースです。要件決めの段階で関わる人数が多い場合や、ダッシュボード公開後に多くの人の目にとまり要望が集まりやすくなる場合に起きがちです。情報は多ければ多いほど認知負荷が高まってしまうため、良かれと思って全方面からの要望に応えるのは得策ではありません。先ほどの学び①の段階で「いつ、何のために、どう使うのか?」をしっかり考えますが、同時に「誰が使うのか?」という利用者像も定めておくのが良いと思います。事前に定めた利用イメージと照らし合わせて情報の取捨選択をしていけば情報が増えすぎることは防げます。また、その範囲から大きくはみ出すような要望は新規の分析案件として検討すべきだと考えます。

学び③ 可能な限り上層の意思決定者を巻き込む

私のような平社員アナリストの立場からだと「多くの人が納得する決定を下すこと」や「多くの人から信頼されるものを作ること」を1人で実施するのは簡単ではなく、権限的にも限界があります。そういうときは上手く上司に頼るのが吉です。大部分は自分で主体的に進行しつつ大事なポイントで上司のレビューや承認を挟んでいくことで、自信をもって前進できるし最終成果物の信頼度も上がります。今回のダッシュボードが信頼され広く活用されているのはマーケティング部門長である依頼者の承認を得ながら進めることができたおかげだと思っています。

(いつかは頼られる側になれるよう、上司の意思決定のしかたはよく見て吸収していきたいですね。)

もうひとつの学び「なぜ上手くいったのかを考えることが苦悩のループから抜け出す第一歩」

以上、私の上手くいった経験からの学びのご紹介でした。しかし、これらは万人にとっての正解であるとは限らないです。なぜなら私の経験の範囲内でしか考えられていないからです。しかし、いかなる場合でも「なぜ上手くいったのかを考えることが苦悩のループから抜け出す第一歩」にはなりそうです。私の学び①~③は当たり前のことばかりに見えますが、あえてじっくり考えてみないと気が付かなかったことがほとんどです。気が付かなければ再現できる保証はないし、誰かに教えることもできません。自分の言葉で説明できる程度までかみ砕いて考えることで初めて再現を目指せるのではないかと思いました。

まとめ

今回は、ダッシュボード作成について自分自身の仕事を分析して得た学びについてお話しました。

「分析してみた」という大げさなタイトルをつけてここまで語ってきましたが、要は上手くいった仕事をしっかりと振り返ってみましたというお話でした。「せっかくダッシュボードを作ったのに活用されない」という問題をアナリストあるあると勝手に認定して長いこと見て見ぬふりをしてきた私ですが、しっかり考えることで自分なりの解決手法を見出すことができました。これからもこのような姿勢で他の業務にも取り組んでいきたいと思っています。

ちなみに後日談ですが、その後はダッシュボード作成の際にこれらの学びを活用して「意図的にうまく進める」ということをかなり意識できています。あるダッシュボード作成の際には、考え得る可視化のパターンが複数あり絞り込むのが難しかったため、表計算ソフト上で作った仮のアウトプットの使い勝手を確認いただくところから始めてみました。すると「縦軸は〇〇で横軸は△△のパターンがあると読み取りやすい」等の具体的な要望もいただけるようになりました。とてもスムーズに議論を進めることができ、依頼者からも「たたき台があると利用のイメージがしやすい」という声をいただきました。意図して行動した部分が相手にも伝わり、仕事の質が上がった実感も得られています。(♪ハッピーハッピーハッピー😸)

ここまで読んでくださりありがとうございました! 私の学びが似た悩みを持つ方の参考になれば嬉しいです。

最後に

今回のような「自分自身の仕事を分析してみた」という話は社内を見渡すと決して珍しい話ではありません。振り返りから学びを得て次に活かしていくという成長プロセスが全社的に根付いていると感じます。

MonotaROでの仕事への向き合い方や分析業務に興味を持っていただけた方は、ぜひカジュアル面談もしくは採用にご応募ください!

カジュアル面談: docs.google.com

採用: データサイエンティスト(データ分析・マーケティング) hrmos.co