はじめに
こんにちは。プラットフォームエンジニアリング部門の池田(@progrhyme)です。
この記事では、モノタロウのテック系の部門で筆者が取り組んできた「ドキュメンテーションプロジェクト」について、下の目次の流れに沿って紹介していきます。
【目次】
「ドキュメンテーションプロジェクト」とは
初めに、プロジェクトの概要について簡単に説明します。
このプロジェクトのミッション(=目標)は主に以下の2つです。
- ドキュメンテーションを通してプロジェクト内外のコミュニケーションを効率化し、業務プロセスの効率を上げる
- 社内のドキュメンテーションの質を高め、プロダクトの長期安定運用に貢献する
プロジェクトの発足は2019年で、筆者は同年12月に一メンバーとして加わりましたが、いつの間にかプロジェクトの主要リーダーとなっていました。
初めは当時のデータマーケティング部門で始まったプロジェクトですが、2024年6月現在はテック系の7つの部門にまで適用範囲が広がっています。
プロジェクト発足の背景
プロジェクトが発足した2019年当時、データマーケティング部門では下の2つの課題がありました。
- 組織規模の拡大に伴うコミュニケーションパスの爆発的な増加
- ConfluenceとGoogleドキュメントの混在
前者の課題について、データマーケティング部門が発足した2016年時点では部門の人数は20名でしたが、2019年末には約100名に上っていました。
単純に考えて、ある組織の中で一対一のコミュニケーションのパスは人数の二乗に比例して増加します。
下の図中において、左側の円がこの様子を表しています。
このモデルを当てはめると、人数が20 → 100人に増えることで、コミュニケーションの経路は190 → 4950本に増えることになります。
これに対し、上図の右側の円のようにドキュメントを通したコミュニケーションを行うことで、シンプルにコミュニケーションの頻度を減らせると考えられました。
これが、前掲のミッション中にある「ドキュメンテーションを通したプロジェクト内外のコミュニケーションの効率化」の一例です。
他方、後者の課題については、主なドキュメンテーションのツールとして、ConfluenceとGoogleドキュメントが並列に存在し、混在している状態でした。
歴史的にConfluenceを利用するチームが多い状況ではありましたが、スペースが乱立していたり、ページ数が増えたことで検索してもなかなか必要な情報が見つからなかったり……などといった問題もありました。
この辺りのツールの統一も、上と同様にミッションの「コミュニケーションの効率化」につながるものです。
ねらい(まとめ)
以上のような状況を踏まえ、ドキュメンテーションプロジェクトの初期の目標として主に次の2つが設けられました。
- 「ハブ」となるドキュメントが作られるように組織内の活動を促進し、コミュニケーションを効率化する
- ConfluenceとGoogleドキュメントをどちらかに統一する
何をやったか
ドキュメンテーションの促進
前述の背景の内容を踏まえ、私たちが取り組んだことは主に以下のようなことです。
- ドキュメントテンプレートの提供・保守
- ドキュメンテーションガイドラインの作成
- 勉強会の実施
また、これと並行して、後述する「ConfluenceからGoogleドキュメントへの移行」の取り組みも行いました。
従って、ドキュメントテンプレートやガイドラインもGoogleドキュメントを主に用いる前提となっています。
取組みの具体的な内容について、かいつまんで紹介します。
まず、ドキュメントテンプレートとしては、議事録やDesign Doc、ポータル文書といったよく作成される文書の雛形を作成し、組織のGoogle Workspaceのテンプレートとして登録しました(参考:下図「Googleドキュメントのテンプレートギャラリー」)。
これによって、モノタロウ全体でそれらのテンプレートが利用可能になりました。
次に、それらのテンプレートの利用方法や共有ドライブの使い方などを詳しく記したガイドライン(下図を参照)を作成し、ドキュメンテーションプロジェクトの対象部門内で周知しました。
また、フォローアップとしての勉強会を実施することで、プロジェクトの取り組みがより浸透するようにしました。
勉強会の内容としては、上のガイドラインのおさらいや、既にある程度ドキュメントが整っているチームを例に挙げて、チームでドキュメントを整えていくための流れを説明するなどしました。
Confluence → Googleドキュメントへの移行
続いて、もう一つの取り組みであるドキュメンテーションツールの統一について述べます。
既に結論を述べた形になりますが、プロジェクトの初期にConfluenceとGoogleドキュメントを比較した際、以下のような意見があってGoogleドキュメントに統一していく方針に決まりました。
- 特に検索性においてGoogleドキュメントの方が優れている
- Googleドキュメントの方がシンプルなので、ドキュメントの品質を揃えやすい
また、データマーケティング部門でConfluenceからGoogleドキュメントへの移行を行った後、両ツールの比較調査アンケートを実施しました。
その結果、下図のようにConfluenceよりもGoogleドキュメントの方が明確に良い評価を獲得していました。
ただし、実際の移行にあたっては、Confluence上のコンテンツをどうやってGoogleドキュメントに移行するかが大きな課題となりました。
今回、移行対象となったテック系部門管轄のConfluenceスペースは120ほどありました。全体のページ数は集計していませんが、中には1000ページ以上のページを抱えるスペースもありました。
とても手作業で移行できる量ではありません。
この問題に対しては、Go言語で専用の変換ツールを実装して対応しました。
本稿ではこのツールの実装詳細については割愛しますが、機能としてはConfluenceで指定したスペース上のページを一括してGoogleドキュメントに変換し、Googleドライブの任意のフォルダに格納するというものです。
このツールを用意したことで、複数の担当者で手分けしてスペースごとにコンテンツの移行作業を進めることができました。
その結果どうだったか
上手く行ったこと
上述の2種類の取り組みにおいて、いずれも定性的には満足の行く結果を得ることができました。
まず、1つ目の「ドキュメンテーションの促進」においては、Googleドライブ上でテンプレートに基づいて新たに作られたドキュメントのファイル数を計測したところ、プロジェクトの導入当初に比べて数ヶ月のデータでは大きく数が増えていました(下の2つの図を参照)。
もちろん、これだけでは作られたドキュメントがもともとのねらい通り「ドキュメントハブ」としての役割を果たしているのかはわかりません。
残念ながら、それを示すデータを取得することはできませんでしたが、何度か実施したアンケートの回答では肯定的な反応も見られました。
以下、アンケート回答から一部を抜粋して列挙します。
- 「テンプレートのおかげで統一感のあるドキュメントが作成できている」
- 「テンプレートがあるおかげで、ドキュメントを読む際にも理解しやすい」
- 「ドキュメンテーションの環境はここ数年でとても良くなっている」
- 「素晴らしい取り組み。数年前と比較して驚くほどの違いがある」
- 「ドキュメントを作る文化が定着してきた」
少なくとも、プロジェクト開始以前と比べて、業務の様々なタイミングで自然とドキュメントが作られるような文化を形成することができた、と言えそうです。
そして、2つ目のConfluence → Googleドキュメントへの移行については、既に上で述べた通り、対象の120ほどのスペースを移行し、アンケートでも好評を得ることができました。
上手く行かなかったこと
逆に、これといって「上手く行かなかった」という取組みはないのですが、強いて言えば、これまで述べてきた取組みが「具体的にどの程度の成果になったか」ということを定量的に明確な形で示すことができませんでした。
組織の中にいるメンバーとしてはプロジェクトを導入した効果を実感できているのですが、実際に「このようなドキュメントがあったことで、これだけ業務の効率化に結びついた」ということを定量的に示すことは難しいです。
アンケート調査によって、適用部門におけるドキュメンテーションの成熟度や活用度合いといった数値は継続して取得していましたが、本プロジェクトを導入した効果を明に示す結果は得られませんでした。
そういった要因もあり、プロジェクトを積極的に推進し続けられなかったことも、上手く行かなかったことの一つに挙げられるかもしれません。
まとめ
以上、筆者がモノタロウのテック系部門で取り組んできた「ドキュメンテーションプロジェクト」について、その取り組みの主な内容と成果を紹介しました。
現在、ドキュメンテーションプロジェクトはプロジェクトとして十分に成熟したことを鑑み、必要最小限の工数で運用している状況です。
まだまだやり得ることはたくさんあるのですが、今のところ工数対効果を見込みづらく、見送りになっています。
とはいえ、ドキュメンテーションは重要な分野なので、日々の運用をこなしつつ、少しでも改善していけたらと考えています。
モノタロウでは、ドキュメンテーションをおろそかにしないエンジニアを積極的に採用しています。
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