こんにちは、エンタープライズビジネスエンジニアリング部門 購買ソリューショングループの河本です。 今回はモノタロウのECサイトとして一般的に広く知られているmonotaro.comではなく、年40%増の急成長事業である購買管理システム事業(以降、大企業連携と呼びます)のシステムの概要を説明します。後半には、売上向上に直結する新規連携開発業務の苦労や面白さも掲載しています。ぜひご覧ください。
購買管理システム事業(大企業連携)とは
まずはじめに、大企業連携について簡単に紹介します。
大企業連携では、企業様の以下のような課題を解決します。
- 間接資材に関わるコスト全般を削減したい
- 業務の効率化を測り、間接資材の調達手段を全社・全拠点で統一したい
- 現行システムとシームレスに連携し、短期間でネット調達を実現したい
それを実現するために、大企業連携では大きく2つのECサイトを提供しています。
- 企業様がもつ購買システムと連携するECサイト (カタログサイト)
- 購買システムをもたない企業様向けの購買管理までできるECサイト (ONE SOURCE Lite)
上記のECサイトで購入できる商品はmonotaro.comと変わらず、1900万点あります。
大きな違いはご利用企業様専用のプレミアムサービスを提供していることです。
具体的には以下です。
- 専用購買サイトの提供 ※上記に記載した2つのECサイト
- 外部カタログサイトの提供
- プレミアムコールセンター
- ユーザーマスタ登録管理
- 分析レポートの提供
- 請求データの提供
大企業連携で提供しているサービスの詳細については以下をご覧ください。
間接資材の調達改革!大企業向け間接資材集中購買サービス|モノタロウ
大企業連携システムの概要
上記では大企業連携で提供しているサービスを簡単に紹介しました。
ここでは、2つのECサイトのうち「企業様がもつ購買システムと連携するECサイト(カタログサイト)」に関連するシステムを解説します。
ユーザーが商品を購買する流れ
システムの話の前に、ユーザーがサービスを利用して商品を購買する流れ(探す→注文する→受け取る→支払う)の概略図をご覧ください。
ユーザーはまず企業の購買システムにアクセスします。購買システムは企業ごとに異なります。
次に、購入したい商品を売っているサプライヤを選択し、そのサプライヤのカタログサイトにアクセスします。購買システムから見るとモノタロウは多くのサプライヤのうちの1つになります。
カタログサイトで所望の商品を検索し、バスケット(買い物かご)に入れて購入するつもりの商品を決定して購買システムに持ち帰ります。この時点ではまだ商品は注文されていません。ユーザーが購買システム上で購入依頼をして承認されたら、サプライヤに注文がされます。
モノタロウでは、注文がきたら基幹システムで受注し、商品の引当、出荷をします。
この引当、出荷の各タイミングで購買システムに納期情報や出荷情報を自動で連携することで、ユーザは納期や配達日の状況を確認できるようになります。
注文に含まれるすべての商品が無事出荷されると、支払い方法にもよりますが、購買システムに請求情報を連携する場合もあります。
以上が商品を購買する際の簡単な流れになります。
大企業連携を支えるシステム構成
大企業連携システムを実現しているシステム構成が以下です。
以降では各仕組みについて説明します。
パンチアウト連携 (商品を探す、注文する)
パンチアウト連携とは、購買システムとサプライヤのカタログサイトをシステム連携する方式の一種です。システム構成図の「パンチアウト連携機能」の赤枠の部分にあたります。
主な機能には以下があります。
- チェックイン (購買システム→モノタロウ)
- ユーザーがカタログサイトにアクセスする際にまずはじめに行います。購買システムから認証情報を受け取り、カタログサイトのトップページへのURLを返却します。
- チェックアウト (モノタロウ→購買システム)
- ユーザーがカタログサイトで決めた商品が入ったバスケットの情報を返却します。
- バスケットの情報には、当社の注文コード、商品名、数量、価格、オプション情報が含まれます。連携によっては、カテゴリー情報、リードタイム、エコマーク認定番号等の属性情報も含まれます。
- ここで返却された情報が購買システムに取り込まれ、ユーザーは選択した商品情報を購買システム上で確認できるようになります。
- 注文受付 (購買システム→モノタロウ)
- 購買システムで承認された注文情報を受け付けます。 注文情報はDBに保存され、定期的に実行される注文入力処理により、当社基幹システムへと連携されます。
カタログサイトには他にもいくつか特徴的な機能があります。
- 顧客ごとの購買制限
- カテゴリー、ブランド、価格などをもとに顧客ごとに商品の非表示/警告表示/購入不可を細かく制御できます。
- また、非課税商品・軽減税率商品・オプション商品に対しても同様の制御が可能です。
- これらの制御は管理機能を使って設定します。
- 横串検索
- 認証情報と検索条件を受け取り、検索結果を返却します。
- 購買システムではレスポンスが速いサプライヤからの検索結果を優先的に表示する場合があるため、速度がとても重要になります。
データ連携 (納期/出荷/請求の情報を確認する)
購買システムから商品を注文されて、当社の基幹システムで受注したら終わりではありません。ユーザーとしては、注文した商品が受け付けられたか、いつ届きそうか、いつ出荷されたかを知ることが重要になります。
これらの情報を購買システムに連携するために納期情報、出荷情報、請求情報などをデータ連携します。システム構成図の「データ連携機能」の赤枠の部分にあたります。
これらのデータ連携は、システム構成図にあるバッチサーバでの定期的なバッチ処理により実現されています。
- 注文確認データ連携
- 基幹システムへ投入された受注情報や商品が引当された際の出荷予定情報を各購買システムへ連携します。
- 具体的には、受注した注文コード、商品名、数量、価格、出荷予定日などです。
- 出荷通知データ連携
- 商品が出荷されたことが基幹システムに連携された後に、出荷情報を各購買システムへ連携します。
- 具体的には、注文コード、数量、配達予定日、追跡のための出荷番号などです。
- 請求データ連携
- 商品が出荷された翌日に出荷実績をもとに請求データを作成し、各購買システムへ連携します。
技術スタック
大企業管理システムを実現するために採用している主な技術スタックは次の通りです。(2023年3月時点)
大企業連携システムの開発業務
筆者が所属する購買ソリューショングループでは以下のような業務を行っています。
- 大企業連携システムの開発、運用、保守
- 購買システムとの新規連携開発
- 機能追加/改善、不具合修正
- 管理機能改善、運用改善
- 請求業務の効率化
- システム基盤の安定稼働、機能強化
- 急成長ビジネスを支えるためのシステム基盤刷新
- 営業やカスタマーサポートからの問合せ対応
今回は、大企業連携の売上向上に特に直結する「購買システムとの新規連携開発」についての苦労や面白さについても紹介します。
新規連携開発の苦労
新規連携開発とは、購買システムを利用する顧客とのパンチアウトおよびデータ連携を新たに増やすことです。内製開発をしています。
一番の苦労は、なんといっても購買システムごとに異なる仕様を理解し、要求/要件を満たす連携機能を実現するところです。
世の中には数多くの購買システムが存在します。この購買システムごとに連携仕様が異なります。さらに、同じ購買システムでも顧客ごとに仕様が異なることも多いです。
以下に新規連携開発時の対応フローの概略を示します。
赤枠で囲われた部分が連携仕様の調整やQA、運用調整をしつつ、設計/実装をするフェーズになります。「顧客」と「モノタロウの営業/CS(カスタマーサポート)」と「私たち開発」が協力して対応内容を詰めていきます。この部分に一番時間がかかります。購買システムによってはこの時点でははっきりした仕様がわからないことも稀にあります。その場合は、実際にその購買システムからチェックインや注文のリクエストを送ってもらって、具体的な内容をドキュメントに起こして仕様調整していくという地道な作業になります。
連携にもよりますが、新規連携をリリースするまでに短くて3か月、長くて半年から1年以上かかります。
新規連携開発の面白さ
上記では、購買システム/顧客ごとに異なる仕様の調整が大変であり、苦労するところであるといいました。しかし、逆にここが新規連携開発の一番の面白いところとも言えます。
顧客の要望をヒアリングしながら顧客の業務を知り、時にはこちらから提案して顧客がやりたいことを要件に落としていきます。当社標準の連携仕様もあるため、うまくそれに合致するようにできれば、以降の開発がスムーズにいきます。
また、設計/実装面では購買システム/顧客ごとに異なる仕様を愚直に実装するのではなく、既存の設計/実装を考慮して汎用化や抽象化することができれば、保守性を損なうことなく今後の機能改修も短時間でできるという大きなメリットがあります。ここがソフトウェアエンジニアとしては腕の見せ所でもあります。
さらに、上記の対応フローにも示した要件定義からリリース/運用までの一連のフェーズのすべてに担当者として主体的に関わるため、フルサイクルエンジニアリングを経験できます。単に開発して終わりではなく、開発した連携が実際に使われて、それが売上にもつながっていることを一番実感することができる開発だと思っています。
ここ数年、新規連携開発の件数が増えてきており、重要性も増しています。 また、1つの新規連携開発が終わったら次の新規連携開発が始まるため、改善のサイクルを回しやすい、というところも魅力の1つです。
例えば、最近の活動では、要件定義フェーズでやることをチェックリストに整理して連携開始時の確認項目テンプレートとすることで、営業/開発間での認識を合わせやすくなり、開発後半での抜け漏れ発覚やそれによる手戻りを未然防止できるようになりました。また、このテンプレートに合わせる形で開発ガイドも用意することで、新規参入メンバも開発に入りやすくなっています。 実装面では、顧客ごとに微妙に異なる仕様が多い購買システムにおいてプログラムを共通化するリファクタリングを実施しました。これにより、仕様書を入手できない場合に比べて、新規連携開発を約30%短縮できています。
さいごに
冒頭にも記載したように、購買管理システム事業(大企業連携)は年40%増の急成長事業です。この傾向は今後も続くことが想定/期待されています。
私たちのグループでは事業の急成長を支えるためのシステム開発/運用が求められています。
そのために、新規連携や機能改修の開発生産性を向上させるための取り組みが必要です。
また、連携する購買システムやユーザが増加することで、問合せ件数もさらに増えると考えられます。問合せ対応の省力化や効率化、問合せ自体の件数を削減するための対応も喫緊の課題となっています。
さらに、ユーザーが利用するカタログサイトのUI/UXを向上させ、連携企業の間接資材に関わるコスト全般を削減することへの貢献も非常に重要です。
と、このようにやりたいことややらなければいけないことが数多くあります。
上記の取り組みには、まだまだ多くのメンバが必要です。大企業連携システムの開発に興味を持った方がいれば、カジュアルMTGや採用へのご応募ををお待ちしています!
大企業連携システムのマネージャーのインタビューもあるのでよかったらご覧ください。 note.com