アウトプットファースト受け入れ

こんにちは yoichi22 です。新しい人が来たときの挨拶で「早くチームに貢献できるようになりたいです」という言葉をよく聞きます。受け入れる側のチームは、素早くチームに馴染んでもらって力を発揮できるように最善を尽すべきと思っています。最近私の居るチームでメンバの入れ替えがあり隣のチームから人が移ってきましたが、常時ペアワークしているチームの運用に合わせる形で工夫して受け入れをやってみたのでその内容を共有します。

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作戦

受け入れのやり方として、最初にチームでの生活にまつわる様々なことをインプットするための時間を取り、その後でちょっとずつアウトプットを増やしていくのがよくあるやり方だと思います。その場合、最初は既存のメンバーから説明をして聞いてもらったり、ドキュメントを読んでもらったりすることから始めます。一方でペアワークやモブワークに取り組んでいるチームでは、初っ端からアウトプットをしてもらうことも可能です。今回はすぐ隣のチームからの異動だったので我々の扱っているシステムについて若干の前提知識を持っていることもあり、いきなりアウトプットから始めたほうが素早く立ち上がってくれそうと考えました。とはいえ仕事の進め方の違いに戸惑うことはあると思ったので、はじめは若干の教育的配慮をしつつ進めていくことにしました。

チームのやり方に慣れる

我々のチームでは以前の記事で紹介したように、常時ペアワークで仕事を進めています。 新しい人(以下ではYさんとします)には初っ端からアウトプットをしてもらうと決めたのですが、常時ペアで作業するというこれまで経験のないやり方と、これまでやったことのない内容の両方を同時に始めると混乱を招くのではと考えました。質の高い体験を短時間でしてもらうという期待値に対して、同時に複数の新しいことに手を出すことで意識が割かれ、中途半端な体験になってしまうのではという危惧です。そこでまずはやり方から慣れてもらおうと、Yさんが異動の際に持ち込んできたやりかけのタスクを、私とペアを組んでやってみる事にしました。

そのタスクは我々がメンテナンスしているWebアプリケーションのテストコードに新たな書き方を導入するものでした。重要度は高いけど緊急度は低い類のタスクのため、他のタスクの合間に細々としか進められずずるずると長期化していました。そこで何を目的としているのか、どうやって進めようとしていたかまで立ち戻って、ずるずるを断ち切り終わらせるストーリーを一緒に考えることから始めました。

前のチームでは既にYさんからまわりのメンバに目的を説明し、進め方を議論しながらやっていたとのことだったので、「準備なしでお話聞かせてもらえますよね?」と、半ば強制的に聞き取りを開始しました。説明をしてもらいながら、本質的と思われる部分で専門用語を使っていたら「それはどういうこと?」と聞いて平易な言葉で言い直してもらって、かっこいい用語に頼らずに自分の言葉で説明できるかを確認していきました。するとところどころ回答に詰まる部分が出てきたので、二人で一緒に考えてひとつひとつ答を出していきました。そうして共通認識を作り上げていくという作業を通して、考えていることの深い同期を常に取りながらペアで仕事を進めていくやり方を体験してもらいました。内容と目的が共通認識となったので残タスクを整理し、ひとまずのスコープを価値のある最小限のものに限定して、次の一週間で終わらせられるボリュームに落とし込むまでを最初の一週間でやりきりました。

この週の前半は、会話して認識合ったと思って先に進むと何となく噛み合わない感じがして、話を続けていくうちに実はすれ違っていたとわかり同期をリトライということが何度もあったのですが、日が経つにつれてだんだん再同期の回数が減ってくるのを実感しました。毎日終業前に時間を少しとって、一日でやったことをふりかえり、明日もっと上手くやるにはどうしたらいいかを言い合い、ペアワークにおけるお互いの関わり方の微調整をしながら進んだことも良い効果をもたらしたと考えています。

計画までで一週間が終わってしまいその計画実行が残ったので、翌週も引き続き私とYさんでペアを組んでやり遂げ、アウトプットをチームに届けることができました。その週もたくさんの会話をして、すれ違っては同期しての繰り返しでしたが、前の週の終わりの時点でゴールが明確になっていたのでそれに向かって着実に一歩ずつ進んでいき、途中判断が必要になった時も徐々にすり合ってきた価値観に基づきスムーズに進む方向を決められたのがよかったです!

チームの仕事に慣れる

その次は弊チームでメンテナンスしている、商品情報を扱う巨大バッチの運用タスクを担当してもらうことにしました。 Yさんはこれまでそのバッチのコードを触ったことはありませんでしたが、ペアワークであれば前提知識の事前インプットなしの状態から必要な知識を獲得して仕事をこなし、アウトプットできるはずと期待しました。

過去に同様のタスクを担当したことがあるメンバーにフォローをお願いして、ペアの相手を変えて取り組んでもらいました。 私からは細かい進め方は何も指示しなかったのですが、他部署の関係者との打ち合わせの設定から手順の組み立てまで、Yさんが中心になって進める形に導いてくれ、それにYさんが応える形でタスクを主導して無事にタスクを完了させることができました。

本番作業で想定外の事態が発生してしまったときも、落ち着いてまわりを巻き込み相談して素早くその先の対処方針を提案してくれて、とても安心感がありました。

チームの基礎知識を学ぶ

チームに合流して一ヶ月程度で、次々とアウトプットをしながらチームの仕事に馴染んで来たわけですが、この段階になって少し腰を据えて学びの時間を取るべきという声が、本人と周りのメンバから同時に上がりました。やることに対してリソースに余裕があるわけではないので、短期的に見ればアウトプットできるようになってるんだからそのまま継続すればよいという考え方もあります。ですが、必要に応じて都度まわりに聞きながらタスクを進められている状態で立ち止まらず、初期の段階での成長をもっと加速しておくべきというのがチームの総意であると理解しました。メンテナンスしてる巨大バッチの全体像を把握して、一段上の視座で物事を見れるようになれば、さらにぐんと加速できると期待して、ここにきてやっとインプットに注力し強化するフェーズに入りました。

ただし、インプットがきちんとできたかを確認するには、説明という形のアウトプットをしてもらうしかないことをここまでの数週間で我々は認識していました。「わかった?」に対して「はい」と言っていても、見当違いの理解をしていてそこからだんだん話が噛み合わなくなってくる経験をたっぷりしたので、長くて半日、短くて半時間のインプットの後すぐに学んだことを説明してもらい、適宜質問をはさんで理解度を確認していくという進め方をしました。短めのサイクルにしたことで、「ここはそれくらいの深さでいいよ」「ここは重要なのでもうひとつ深いレベルまで見て説明して欲しいな」といったフィードバックができ、重要でないところで時間を使いすぎて重要なところを掘り下げる時間がなくなることを避け、適切なレベルで全体像を把握してもらうことができました。

まとめ

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新しく来たYさんのチームへの受け入れで、アウトプット駆動でやってみたことを書きました。

Yさんと既存メンバーでペアを組んで、まずはYさんが知っている内容をチームのやり方でこなし、次にYさんが知らなかったチームの仕事を一緒にこなして、初っ端からアウトプットを出せるということを体験してもらいました。その過程ではアウトプットに必要な最小限の知識を素早く入手し、インプットした知識を即座に活用することで、得た知識を自分のものとして定着させられました。

その上で、一段上のアウトプットを出していくためという目的意識を持ってインプットを強化し、プロダクトの概要を把握する時間をとりました。その際も得た知識を小出しにアウトプットしてはフィードバックを受けるのを短いサイクルで繰り返し、適切なレベルでの知識習得ができました。

スピード感を持って受け入れを進められたポイントは

  • 受け入れの最初からアウトプット先行で、それに必要なことに集中したこと
  • 期待する行動からのずれに気づいたら、作業を止めてすり合わせたこと
  • 小さなふりかえりでフィードバックをもらい、やり方の微調整を続けたこと

だと考えています。

これを従来のインプットファースト&ソロワークでやっていたとしたら、他のメンバとの距離感もつかめていない状態で、「聞いてもいいのかな?」「もうちょっと考えてからのほうがいいのかな?」と割り込みを遠慮、躊躇しているうちに、吸収力の強い貴重な最初の時間はあっという間に過ぎ去ってしまっていたのではと思います。

アウトプットファースト&ペアワークで進めるやり方では、そういった逡巡はアウトプットを止めてしまうので、わからないことは即座に聞かざるを得ず、ペアで会話して作業するうちに理解の間違いや不足に気付けば見て見ぬふりはできないので、すぐにフィードバックしてもらえる。自然とフィードバックループを短くする力が働くことを実感しました。

新しい人をひとりにさせないということが、常時ペアワークというチームの普段の運用から当たり前のこととして導かれ、それがうまく機能したということで、ひとまずは新しいメンバを加えチームの力が増しました。チームに馴染んだからといって互いに刺激し合い学んでいく歩みには終わりはないのでこの先もガンガン行きます!